ZC33S コラム

【試乗】トヨタ・ヤリスに試乗してきた【速報】

新型ヤリスの試乗レポートがメディアに上がり始めました。注目はTNGA(ToyotaNewageGlobalArchtecture)を初めて用いたコンパクト・カーであることです。

筆者の母は代々プリウスを乗り継いでいるのですが、現行プリウスに乗って衝撃を受けました。「今までのトヨタ車とは違う。凄くいいクルマになっている!!」

それまでのプリウス(2代目、3代目)といえば、申し訳ないですが走りという点においては語るべきことはなく、運転が苦痛に感じる部類のクルマでありました(個人の感想です)。しかし、現行型の走りは、そんな固定観念がぶっ飛ぶ「欧州車基準」といっても差し支えないしっかりしたものに豹変していたのです。

この要因となるのが先述のTNGAを用いたパッケージングです。
世界に通用する走り、基本性能や環境性能をトータルで横断的に改革したとのふれこみは、プリウスや同シャシーを用いたCH-Rなどからしても、従来のトヨタ車のイメージを覆す、走りにウルサイ人をも黙らせるデキが実現していました。

そして、我々「欧州仕込みのスポーツコンパクト」スイフトスポーツにオーナーから見て、そのTNGAを用いたヤリスはどう感じるのでしょうか。

どんなクルマ?

今回試乗することができたのは、ガソリンの1.5G CVTです。
メーカーオプションのコンフォートシートセットと185/60-15サイズのタイヤとアルミホイール、ナビ、LEDヘッドランプなどが装備された仕様。

見た目の第一印象は「小さいな」というもの。
というのもフロントガラスがかなり寝ていて、キャビンスペースが小さく見えるデザイン、つまり上屋が小さく見えるクーペ的なスタイルにより、見た目は「アクア」っぽいと感じました。

リア周りのブリスターフェンダー風な造形が特徴的ですが、これはボディをえぐってそうみせているだけで全幅は1695mmと5ナンバーサイズに収まります。

タイヤが4隅に踏ん張った配置になっており、スポーティさが際立っています。

リアラゲッジの開口部はかなり小さめ。ラゲッジ自体は深さがあるので、極端に狭いわけではないけど、開口部も高めでボディ剛性にこだわったことがうかがえます。
スイフトと比較しても奥行きはほぼ同じ。左右の有効長がやや短くなっています。
そもそも荷物をたくさん積む用途は想定していないか、リアシートをたたんで積むという割り切りが潔いと感じました。

リアシートはかなり狭いです。
リアに筆者(173cm)がリラックスして座ろうとすると、前席をかなり前に出さないと難しい感じでした。この点も我らがスイフトと大差なしです。

乗ってみると

ドアを開けると、我らがスイフトと比較して凝りに凝った造詣のドアトリム、立体的なインパネに圧倒されます。この辺は「さすがトヨタ」。圧巻です。

インパネからの眺め、樹脂の質感もちょっと比べられないです(笑)。
この有機的なうねりのある造形は好き嫌いが分かれそう。

ただ、フロントガラスがかなり寝ていて、圧迫感を最初は感じました。
この辺はフロントガラスが遠いスイフトとの違いです。

現在のトヨタ車のトレンド、ディスプレイオーディオもとにかく画面がデカいです。

ステアリングはチルトの他テレスコピックも備わっており、シートの調整幅も大きく、ここも欧州車的なつくりになっていて好印象です。

※ディスプレイオーディオは操作性も良好。
シフトゲートはオーソドックスなもの。節度感も良し。

走ってみると

早速試乗です。

今回、筆者が楽しみにしていたのは、「ダイナミックフォースエンジン」というたいそうな名前が付いた3気筒直噴1500エンジンはどうなのか、という点と、CVTが新機構ダイレクトCVTという発進ギアがついた新しいものになっているという点です。

比較的空いた午後の市街地を抜け、丘陵地帯を駆け抜けます。

まず、ステアリングの不感帯が少なく、すっきりとした回転フィールが「ヴィッツ」や「アクア」とは違うことを主張している気がします。

他のクルマがいないところで直進しながら左右にハンドルを切るとリアがちゃんとついてきておつり(変な揺り返し)もありません。

アクセルを軽く踏むと「ガラララララララ」・・・・・・

おお、直噴特有の色気のない音。

そこは仕方ないですよね。我らがスイフトも含め、みんなこんな感じ。
気になるのはやはり3気筒特有のパルスというかバイブレーション。

しっかり押さえてあるのですが、信号待ちなどでやはり「プルプル」します。
以前乗ったBMW・ミニほどのプルプル感はありませんが、ちょっと??と感じる人もいるかもしれませんが、慣れです(笑)

しかし、総額230万円を超えるクルマだと考えると少し寂しい気もしないでもないですね。

で、ダイナミックフォースエンジンですが、残念ながらダイナミックなフォースを受信することはできませんでした。

非常に実用域のトルクが厚くて走りやすいですが、音やフィーリングがガサツで、普通の1500エンジンと言っても差し支えないと思いました。

街中を走る限り、この1500エンジンのトルクの厚さと、発信ギア付きCVTの抜群の出足の鋭さで、とにかく楽ちんで速いです。
まだ乗っていませんが、こりゃあハイブリッドいらないのでは?という俊足ぶり。

シートの出来も良く(オプションのコンフォートシート)、ソフトな足回りも含め、その辺はさすが「トヨタ車」。

みんなに嫌われない乗り味に仕上げてあります。

さて、山坂道です。

ここで気になったのかメーター。

スピードは問題なく見えるのですが、タコメーター(液晶画面)は全く読めません(笑)
回転数なんて気にするな、ということなのでしょう。
やっぱりアナログメーターが恋しいと思った筆者です。

さあ、少々ペースを上げていきます。

ブオオオオオオッ 勇ましいノイズを上げて回転を上げて張りつくCVT。
この辺はまんまCVTです。

普段スイスポに乗っている筆者なので加速感は「がんばっているな!」くらいにしか感じませんでしたが、特筆すべきは、そのハンドリング。

とにかく曲がる!!

足回りは速いペースにもちゃんとついてきて、ロールは深いですが怖くないです。

リアの接地感が素晴らしいです。おおおお、こんなに走るのおおお?
という感じで街に戻ります。

しかし、気にならない点がないわけではありません。

先ほど「ソフト」だと申し上げた足回りですが、ペースをある程度上げていくとけっこうキツイ突き上げが来ます。

ある程度のギャップまではタタン・タタンといなせますが、ある大きさを超えると、突然「ドンがっ」と来るので要注意です。

また、ブレーキも非常に頼もしく、しっかりしていたことも付け加えたいと思います。

まとめ


新世代のヤリスはもはや、かつてのトヨタ車ではありません。

プリウスほどの衝撃はさすがになかったですが、足回りをいじったスイフトスポーツから乗り換えても違和感なく走れるって・・・・と思ってしまいました。

語弊を恐れずに言えば、欧州を向いていたスイフトと同じ方向を向いたクルマだと言えます。リアの居住性やラゲッジ容量などを犠牲にしてもボディ剛性を上げ、正確なハンドリングや抜群の足回りを手に入れたヤリス。

これは走りのベース車にしたら楽しいのではないか・・・と妄想します。

もっとも間違いなくGRがスポーツモデルを出すでしょうが。

(GRヤリスは別のクルマ、ウエポンです)

筆者が考えるのは、一番安い1500のXグレードの6MTをローダウンして、お気に入りのアルミを履かせて渋く決める、なんてのを想像してしまいました。

最後に。値段を考えると、スイフトのコストパフォーマンスはやはり凄いとうなりますね。両者に乗っても、スイフトが霞むことはありませんでした。

そしてヤリス。「ヴィッツ」だと思って見積もりを頼むと「えっ?こんなに高いの!!」と驚くことでしょう。いわゆるトヨタ商法で、中間グレードを選ぼうとするとLEDヘッドライトをはじめ、必要だなと思うものがついていなく、オプションで付けていくと最上級グレードに限りなく近づく・・・・


もはや、輸入車のポロやゴルフと大差ない値段にまできてしまったのは、複雑な気持ちです。

Metbon宮

試乗車データ
1500G CVT 2WD 
1,756,000円(税込)
オプション約30万円

MetabonZ

自動車物書きユニット MetabonZ。
理系と文系の著者による「わかりやすさ」「読みやすさ」を目指したブログです。
豊富なクルマ遍歴と謎の知識量。日々頑張ってます。
Metabon宮 Metabon石