EDFC ACTIVE PROと補強について

【敵か?味方か?】ボディ補強のススメ#1

ボディ補強。仲間内でこの言葉が出れば賛否両論、喧々諤々である。
対立する理由は様々だ。
当然、どっちの理屈も正しいと思う。
かくいう自分も、最初は否定派だった..。

EDFCのススメに続く新連載、シリーズ・ボディ補強。

予告通り、本連載をスタートする。

実はボディ補強を進めるうちに、サスペンションのセッティング(ここではEDFCのセッティング)にも大きく関わることが判った。従って我々MetabonZ的には、単にボディ剛性がどうのこうのと言うよりは、これも一種のサスペンションセッティングではないかと考える。よって、今までEDFCというカテゴリーにて投稿していた”EDFCのススメ”の続きととらえて頂きたい。

<注意事項>
一般的なセオリーや、定説とされている事と違うんじゃないかと難癖つけたくなることが書いてあるかもしれない。が、そこはぐっとこらえて頂きたい。何故なら我々が実際に身銭を切り購入した補強パーツを自分の車に取り付け、試し、数カ月に及び体感した事であるからだ。尚、後々登場する補強パーツは数ある市販品の中から我々の好みのものをチョイスしている。

またその補強パーツの効果等を記した考察は単体ではなく、順番に「足していった」ものであることにご理解頂きたい。(Metabon石)

とある仮設から始まった

EDFCというデバイスと、良くできたセッティングによって、走りは飛躍的に良くなった。セッティングを共有するグループ内でも日々Verが更新され、その方向性もよりスポーティへ、峠をがんがんに攻める為の様に過激になっていた(と自分は感じていた)。それはそれで致し方ない(だって気持ちよく走れるのだから)し、EDFCの恩恵を最大限に引き出そうと突き詰めていくとそうなる、というのは理解できる。しかし、毎日の通勤や日常生活メインとなれば、それは少々話は変わってくる。また居住する環境(都市部なのか郊外なのか)も大いに関係するわけで、個人的には少々辛い面もあった。それに対応する為にはどうすればいいのか?と悩んでいるうちに、とある仮設にたどり着く。

車体もバネの一種

毎週末の朝練で、リヤの落ち着きのなさが気になりだす。通勤途中の荒れた路面でも同様である。最初はローコストなトーションビーム式で、悪いことにストローク不足気味なリヤサスペンションに原因があると考えていた。同時に、ZC33Sの驚異的な軽さは、主にリヤ周りのボディにあるのではないかと、車体側にも目が行く。

それらを踏まえて立てた仮設はこうだ。
車はコーナリング時ロールを伴う。遠心力によってロールしたアウト側のサスペンションは縮められるが、同時にサスペンションの車体取付部(アッパー側)にはその反力(バネ定数によりバネを縮めた分の力)が掛かる。この時、車体はプレス成型された薄い鋼板の集合体であるが、完全な剛体ではないので、サスペンションからの反力を受けて捻じれや歪みといった変形が生じる(実際の変形量は局部的には極僅か)。

車体も弾性体(一種のバネ)であるため元の形に戻ろうとする力が生まれる。

コーナリング中、ロールによって縮められたサスペンションがロール方向とは逆に車体を押し戻そうとする力と、車体自体が変形により元に戻ろうとする力が、路面の凸凹を拾った時、不安定な挙動を発生させている(路面状態の良い道でのコーナリングではあまり気にならない)----大げさに言うとサスペンションにボディが負け、ダルな印象を伴っている----つまりボディ自体もバネの様なもので、変形する度合いによってもフィーリングは異なり、いくらサスペンション「だけ」でチューニングしたとしても定量的にはならない----

ではどうするか??
ボディの変形度合いを少なくし、サスペンションが最大限仕事出来る状態にする→ボディ剛性をアップすれば、フィーリングも向上し、セッティングの精度向上し、幅も広がるかもしれない。

という結論にたどり着く。
でもこの時はまだ補強には否定的であった。。。

補強を足すという行為

近年CAEによる高度な解析技術よって、ひと昔前に比べボディの骨格は軽量且つ高剛性で必要強度を保ちつつ、衝突安全性等も考慮されたものになっている。

使用する材料も然りだ。より強度の高い超高張力鋼板を使えば、同じ強度要件ならば板厚を薄くすることができ、結果軽くできる。

車体への入力や捻じれによるダメージは CAE解析によりシュミレーションを行い、発生する応力を可視化・数値化され、車両寿命を全うする様アレンジ(強度アップが必要な部位については強化し、そうでない部位は削ぎ落とす)を行えるようになっている。もちろん、それは試作車や台上加振試験によって実機試験を経て、問題ないことを実証した後、量産化される。

そうして作り上げられた骨格(ボディ)に、安易に補強を足して良いものなのか?補強を足したことによって、別の部位に高応力が発生し、結果的に不具合(亀裂や歪み)の元になるのではないか?という不安がつきまとう。

そうした懸案は少なからずあるはずで、本来ならば後付けした補強パーツ装着状態でCAE解析からやり直したいが、それはスズキの開発部のボディ設計担当であってもおいそれと簡単に出来るものではないと推測される。

よって補強を付け足すというのはそれなりの知見と覚悟が必要とされるものである。何があっても自己責任ということになる。

でも、これでは前に進まない(笑)

<強度と剛性>

一般的に、強度と剛性は違う。強度はその部材が必要とされている強さであって、その部材が入力を受けた際に発生するひずみ(変形)に耐えられるかどうかである。

強度とは、平たく言うと、部材に発生する応力値が材料の引張強さ(降伏点)を超えないかどうかであって、変形(ひずみ)が発生しても弾性域内であれば元に戻るし、壊れない。

上の応力ひずみ線図で示すように、ひずみが降伏点を超えると塑性域となり、部材は変形しても元の形に戻らず、ある時点で破断する。

実際設計上は安全率を取るので(例えば評価条件の2倍とか5倍とか)、部位によっても異なるがある程度余裕があるはずである。よって通常使用状態においては車のボディは変形したままになったり、亀裂が入ってしまうことは無い。

一方、剛性とはなにか?
簡単に言うと変形しずらさであって、強固な状態を言う。

一般的に欧州車は剛性が高いというが、必要強度を保ちつつ、剛性を上げようとすれば当然重量は増す為、スイスポと同クラスの車では遥かに重いはずである。

よって、ボディ剛性を上げるという行為は、せっかくメーカーが苦労して軽く、バランスよく作った車体に、わざわざ重量物となる補強パーツを大枚叩いて買い、付け足し、結果重くするという、一見すると愚かなことなのかもしれない。またそのことによって寿命が縮まる、ということもあるかもしれない。

珍しく先にネガティブな部分を書いてしまったが、当然ポジティブな部分もある。差引きどうなんだ?と聞かれれば、 「気持ちよく走らせる為」という大義名分においては迷わずプラスに作用すると考える。

MetabonZがどのように補強を進めていったのか?
#2に続く

MetabonZ

自動車物書きユニット MetabonZ。
理系と文系の著者による「わかりやすさ」「読みやすさ」を目指したブログです。
豊富なクルマ遍歴と謎の知識量。日々頑張ってます。
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