「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」・・オットー・フォン・ビスマルク(1815-1898)
人は失敗する。そのこと自体は誰にでも起こりうる。問題はそこから何を学ぶかである。失敗した自分を認めることが出来ずに、イソップ童話のすっぱい葡萄の話のように、もっともらしい理屈をつけてやり過ごしてはいないか。実はそこで人生は大きく変わってしまう。今日はそんなことを考えてしまうほどの衝撃を受けたノーマル足戻しのお話。もしあなたが賢者なら、このブログ記事が参考になれば幸いである。
Metabon宮
いつもの朝練。お山にて・・・・
その日、MetabonZがいつものお山に集結した。何か月ぶりだろうか・・・・・
石氏がTEINの車高調(FLEX Z)とそれを制御するEDFCを外し、非常にイイから乗ってみるか?との誘いにいてもたってもいられなくなった休日の朝だった。
写真をみれば分かるが同じ車とは思えないほど印象が異なる・・・・
「ノーマルってこんなだったっけ?」
宮号はエアロがついていることもあるが、かなり低くワイドに見える。そして、石号は・・・・
ローダウン+ワタナベの「チョイワル」なワイルドさが消え、上品で気品のあるオーラをまとっている・・・・
とにかく車高、ホイールでこんなに雰囲気が変わる・・・ってことは分かった。
じゃあ、いつものお山を楽しく走れるのか?
あれだけ通い詰めて、EDFCのセッティングに明け暮れ、補強だなんだ、とやったではないか・・・
ノーマル?それは妥協の産物なのでは?
そんな考えが捨てきれない宮だったが・・・・・・
ノーマル足と自分のクルマ、乗り比べてわかったこと。
結果からいえば、ノーマル戻しを敢行するためにMetabonzFactoryに入庫することになった。
なぜなら・・・
今までEDFCがなんだとかやってたのがバカバカしくなるくらい、楽しく山道を走れたからだ。
ノーマルタイヤ、ホイールにノーマルサスペンション。大したことない、と決めつけてすぐに車高調に変え、ホイール、タイヤも変えた。しかし、なんだこの楽しさと来たら!
・・・・・・・
そのあと、自分の宮号でも同じコースを往復する・・・・・
愕然とするしかなかった。
「!!あれ、俺の(TEIN FLEXZ+EDFC)こんなにガタピシだったっけ?」
何より、ノーマルでは山道の路面の荒れをものともせずステアリングが取られることも、タイヤが路面を離すこともない。
確かにコーナリングでのロールは大きいし、フワフワする感じもある。
でも、それはこの豊かなストロークの副産物だった・・・・
ギャップをいなし、路面からタイヤを離さないこと。これが絶大な安心感につながること。
そのことに気付くまでどれだけかかったというのだ。笑うしかない。
FLEX Z+EDFCの足はいともたやすくギャップで跳ねる、路面からタイヤが離れる・・・
ストロークが足りないとは思っていたがこんなに違うとは・・・・
姿勢制御なんてどうでもいい!
欲しかったのはこのストロークだ!!
そうだ。我々はレーサーじゃない。日常の乗り心地や走りが一番重要なんだ。
荷重移動を意識して、丁寧に走る。スイフトスポーツが提供したかったのはこういう走りなんだ、という実感。実に遠回りしたが、社外品を試したから分かったのだと思う。
なんだかガツンと頭を鈍器のようなもので殴られた気分だった。
そんな折の石さんからの提案。
「MetabonZFactoryで足回り交換してやんよ?」
渡りに船とはこういうことを言う。石さんの作業なら安心してクルマを任せられる。
石さんには本当に、ただただ感謝しかない。
てきぱきとパーツを的確に外し、取り付けていく様を見ていると、その優雅な動きに魅了される。
自分のようなサンデーメカニックとはレベルが違うことをまざまざと思い知らされるのだった。
何より彼は技術屋である。メカを愛しメカに愛された男である。
パーツの扱いや工具のこだわりも凄い。ノウハウの蓄積も凄い。
あっという間にノーマル車高の宮号が目の前に現れた!!
ちなみにノーマル車高にはノーマルホイールだと個人的には思っている。
ノーマル車高で社外ホイールだと、ホイールアーチのせいもあり非常にチグハグで「カッコ悪い」と感じるからだ。
投資した金額を失敗だとは認めたくないという心理
インプレに入る、その前に。
そもそもがローダウンしたいと車高調を導入したことから全ては始まった。
石氏も書いているが、正直TEIN FLEX Zを入れた直後から、「こりゃ失敗したかも」と薄々は気づいていた。しかし、自由になるお小遣いも厳しい中、十数万掛けてなし得た、憧れのローダウンである。引くに引けなくなったというのが正直なところなのだ。EDFCの導入もそうだ。この酷い乗り味をなんとかしたくて飛びついたのである。
ちょうどその頃現れた謎の関西人の誘いにのってEDFCを付け、セッティング欲しさに関西まで行ったっけ。
「今では、懐かしい思い出です」(卒業式の呼びかけ風に)
一度車高調に変えてしまうと、ノーマルに戻すのにも安くはない工賃が発生してしまう。そのことも「後戻りできない」と勝手に思い込んでいた要因の一つだ。
そして何より心の負担になるのが、「金をドブに捨てた」という後悔だ。
おそよ20万円になろうとする投資を「外す」こと。
そして、また工賃をかけてまで取り付ける魅力は・・・・・すでに失っている。
つまりは投資を捨てることになる。
「もったいない」という気持ちが最後まで付きまとう。
しかし、考えてもみてほしい。
いままで、オフ会や某SNSで刺激を受けて、みんなやってるから自分もやるという「カスタムありき」で来てしまわなかったか?
弄ることは楽しい。アドレナリンやドーバミンが分泌され、その興奮で覆い隠されてきた事実があったんじゃないのか。
レースをしてるんじゃない。日常が一番大事だ。
そのことが、今起きている「飽きた」につながったんじゃないのか。
ならば、自分の宮号でも試さねばならない・・・・・
で、ノーマルに戻してどうだったのか?
結論から言おう。
ノーマルに戻した足まわりは最高だ。今までの足まわり(TEIN FLEX ZをEDFC ACTIVE PROで制御)に抱いていた不満が全て解消したのだ。やれセッティングがなんだと騒いでいたこと自体が馬鹿らしくなる。自分が求めてやまない乗り味はノーマル足、そこにあったのだから。2年半前、試乗して衝撃を受けた乗り味はノーマル足にあったことを改めて確認できた。もちろんノーマルタイヤ、ホイールであることも大きい。
この組み合わせで膨大な時間と費用をかけて開発されたものだからだ。
車高調+EDFCで不満だった点は、
①ダンパーの動き自体が鈍く、路面への追従性が良くない。
②ストロークが短いことで、外乱に弱く、ちょっとしたギャップで進路が乱れる。
③どんなにEDFCでセッティングを詰めても総合的な乗り心地は正直良くはない。
①は導入当初からの不満で、柔らかくすれば腰がなくフワフワし、硬くすればビシッとキツイ突き上げがくる。
路面からのショックをうまく吸収してくれているなぁという感じがあまりない。(車種こそ異なるが、これまで経験した、ザックスやオーリンズ、コニなどと比較して)良いダンパーではない、というのが最初からの印象だ。これは電子制御でもどうしようもない。
②については、ストロークのなさから、前方の視界が常に上下動している。視点がブレる。端的に言えばヒョコヒョコした動きになりがちである。これが非常に疲れる原因になるし、オジサンにはつらい。
③は、セッティングをすれば、さっきよりは良くなる。良くなった気がする。でも明日になればまた不満が出る、の繰り返し。
このことをある人は「尽きない楽しみ」と言っていたが、ワタシに言わせれば「尽きない苦しみ」でしかない。
しかも自信満々のセッティングもノーマルに比べたら笑ってしまうほどガサツで洗練されていないのは悲しい。まあ、本人には言ってないけど(笑)みんな、付き合ってあげてたって分かってるといいな。
で、ノーマルは・・・・というと確かに低い車高は失った。社外ホイールも似合わなくなったが・・・
上の3点の不満を見事に解消して、「ああ、これだわ。コレコレ」と唸る素晴らしい乗り味、乗り心地になった。しかも、記憶しているノーマル足より全然印象が良い。
要因としては、完全なノーマルではないという点がある。
TEIN足の動かない対策で施したボディの補強はそのままである。その補強がノーマル足に対しても有効に作用していると考えられる。
ストロークのたっぷりした、たおやかな上下動と路面のギャップのいなし。視点のブレのないフラットさに感動する。
いつもなら身構えるマンホールやギャップにもトトンと軽くクリアできる懐の深さ。
とにかく、今までがやせ我慢だったとわかって肩こりが取れたような感覚だ。
実にすがすがしい(笑)
Metabonzfactoryからの帰り道、笑いが止まらなかったのは内緒だ。
ずっと悩んでいたのはなんだったんだ、と。
山坂道に持ち込んでも同様だ。
深いロールがちょっと怖いが、きちんと基本に忠実に操作すれば、なんだ、ぜんぜんイケるじゃんというくらい走れる。もちろん「オジサン」のちょっと頑張ったくらいの走りでは、だ。
まとめ
まずお断りをしておきたいのは、ワタクシはカスタマイズを否定しているわけではない、ということ。
今回の足回りへの不満はあくまでTEIN FLEX Z+EDFCの話であり、その他の車高調のことは関係ない。
カスタマイズの楽しさはよーく分かっているからこういうブログを立ち上げたってのもある。
今、TEIN FLEXZを付けている人もたくさんいるだろう。その他の車高調の方もいるだろう。
その人が気に入っていれば何の問題もない。どうぞ楽しんでほしい。
でも、カスタマイズの熱が冷め、冷静になったとき、もし不満があるなら、勇気をもってノーマルに戻すのもアリだということ。
その時あらためてノーマルの凄さが分かるはずである。
筆者はノーマル車高、ノーマルホイールの上品な雰囲気がいたく気に入っている。そして、あれだけ飽きたかもしれない、なんて気持ちが吹っ飛び、新車を手に入れたかのワクワクが蘇ったのだ。
ノーマルタイヤ、ノーマル足に補強少々が最新の我々metabonzのおススメだ。
賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ。
愚者であったMetabon宮の話がお役に立てたらうれしい。
自動車物書きユニット MetabonZ。
理系と文系の著者による「わかりやすさ」「読みやすさ」を目指したブログです。
豊富なクルマ遍歴と謎の知識量。日々頑張ってます。
Metabon宮 Metabon石